歯が抜けた! 歯のケガ どうするの? どうなるの?
- 2022/08/30
- 歯とお口の基礎知識
転んだ、何かがぶつかった、ケンカした――そんなとき、歯が欠けたり、抜けたり、グラグラしたりすることがあります。
思わぬ事故で身体が傷ついたり、打撲や骨折、脱臼をしたりすることがあるように、歯がこうしたトラブルに見舞われることも。歯のケガを「歯の外傷」と呼び、成人の4人に1人が経験しているという調査結果もあります。歯がケガしたまま放っておくと、きちんと噛めなくなるばかりでなく、歯ならびが不ぞろいになって精神的な苦痛をともなうこともないとはいえません。
歯がケガしたときに大事なことは、落ちついて正しい処置をし、歯医者さんを受診して適切に治療することです。そうすれば、多くの場合、ケガした歯をもとに近いかたちに戻すことができるのです。
歯医者さんを受診する前に
歯がケガをするような事故にあったとき、何より大切なことは全身の重大な異常や障害を見逃さないことです。
適切に治療し、後遺症に悩まされたりすることがないようにするためには、事故発生時の記録を残し、落ち着いて救急隊員や医師に症状を伝える必要があります。
こんなときは救急車を呼びましょう
- 顔・頭をぶつけている➔脳しんとうの可能性があるため、医療機関を受診
- 頭痛・めまい・吐き気・ふらつきがある➔頭部外傷のおそれがあるため、救急車で脳神経外科などを受診
- 口が開かない、不自然な動きがある➔顎が骨折している可能性があるため、救急車で口腔外科のある病院を受診
今回は歯のケガで抜けてしまったときの対処について説明させていただきます。
歯が抜けたときはどうするの? どうなるの?
・ポイント1:患者さんとご家族にしていただきたいこと
歯が抜けたときは、抜けた歯を探して正しく処置し、時間をおかずに歯医者さんに持ち込むのがもっともよい方法といえます。
そのときの大事なポイントは、歯の根元にあって、歯と骨をつなぐ役目をする「歯根膜」という軟らかい組織を傷つけないようにすることです。
歯根膜は乾燥に弱く、とてもデリケートな組織ですので、なるべく触らないようにしましょう。
抜けた歯が地面に落ちて汚れている場合は、水道水で軽くすすいでください。
汚れがひどくなければ、そのまま適当な容器に入れ、学校の保健室などにある専用保存液や牛乳などにひたします。
容器や専用保存液、牛乳もなければ、頬の内側や舌の下に入れたり、歯が抜けたあとの歯ぐきの穴に戻せるようなら戻したりして、なるべく早く歯医者さんを受診してください。
歯が抜けてからの時間が短いほど、歯が元通りに定着する可能性が高まります。
抜けた歯の保存方法とタイムリミット
- 専用保存液➔約24時間
- 牛乳(できれば無・低脂肪牛乳)➔約6時間
- 口の中(ほっぺの内側、舌の下)➔約1時間
- 生理食塩水➔約1時間
- 水道水➔30分以内
・ポイント2:歯医者さんではこんなふうに治療します
この患者さんは、小学校〇年生のとき、体育の授業中に転倒し、床に顔をぶつけて前歯が抜けました。
保健体育の先生が抜けた前歯を給食の牛乳にひたしてくれ、それを持って学校歯科医でもある私のクリニックに患者さんを連れてきてくれました。
患者さんの抜けた歯をもとの位置に戻し、ワイヤーで固定しました。
歯が抜けてから11年後の写真です。
治療後、噛み合わせにも問題なく、歯ならびもきれいにそろっています。
歯医者さんからのメッセージ
思わぬ事故で歯が抜けた、 グラグラする、欠けた――そんなときはあわてずに適切な処置をし、早めに歯医者さんを受診してください。多くの場合、ケガした歯はもとに近いかたちに戻すことができるのです。
また、スポーツでの外傷の予防にはスポーツマウスガードの利用が有効とされています。
歯は一生の友だち。いくつになっても何でも食べられ、心から笑える歯をどうかお大切に。
神奈川県歯科医師会・海老名市歯科医師会会員
ユーカリ歯科医院 千葉 容太